11月11日 上野広小路亭

「さて、久し振りに日曜日にちゃんとお休みが取れたので……」
上野広小路亭へ」
「わしの台詞を取るな」
「タイトルに出ているから、誰だって分かりますよ」
「先月ネットで発表された出演者が代わっていた。5日に行った時にチェックをしなかったので……」
「はい、いい加減な大家さんなのです」
「前座は5日と同じ春風亭昇吉君で、出し物も同じ『やかん』」
「5日は随分ほめていましたね」
「今日はテンポに乗れなかったな。これだけ出来不出来が激しいのは前座らしいな。逆に安心した」
「変な台詞ですね……さて、プログラムに載っている人は、三遊亭左圓馬
「『笠碁』だった。いい味を出しているなあ。定席では初めてじゃったな……済みません、次回は昨年の写真をお持ちしますので、へへ、もちろん手土産も……」
「私的に挨拶しないの。続いて昔昔亭桃之助
「喜太郎君が2月に二ツ目に昇進しておった。岡山にいて知らなかった。次回は手土産を持って行くから……」
「私的に挨拶しないの」
「出し物は『子ほめ』。前座がよく演じているが、二ツ目になったという差は出ているな。ただ、45歳を『厄そこそこ』と教わって、5歳の子に『どう見ても2、3歳』と言っておきながら、後で40歳の人にどう応対するか分からなくなるのは疑問じゃな」
「大家さんは細かいから……続いてやなぎ南玉
曲独楽。3日の夢丸独演会で見たが、今回は目の前2mの所で見たぞ。見事な芸じゃ」
「はい、次は雷門花助
「『悋気の火の玉』。前半の『私のじゃおいしくないでしょ、フン』からしっかり。『フン』がちょっと大袈裟過ぎる気がするが、まあいい出来じゃな」
桂文月
「『出来心』の前半。泥棒の性格の良さがよく現れていた」
林家今丸
紙切り。同じみ『舞子さん』から始まり、わしのリクエストで『忠臣蔵』。大石と2人の義士という見事なデザイン。後は『横綱』、『恵比寿大黒』、似顔絵は子供がモデルで、顔だけではなくサッカーをやっている全身。これで作品が10点目になりました。いつもありがとうございます。今度手土産を持って参りますので……へへ」
「私的に挨拶しないの……仲トリは三笑亭茶楽
「いつもの通り、『お客様に合わせて出し物を決めております。今日は知的なお客様が多いようなので……』ってんで、出し物はいつもの通り『紙入れ』」
「相変わらずですね」
「今日も子供がいるのにね……まあ、得意にしているだけ、人物描写も見事じゃ」
「さて、仲入り後は神田紅
「まだ覚えていないという『たけくらべ』。原稿を置いて読み進めるという、まあ講談だから許せる世界かも知れない。まあ演出は考えられているようで、人物を描写しているが、もちろん未完成じゃな」
「続いてぴろき
「今日は受け具合もちょうどいい感じで……」
「ちょうどいいって……」
「前々回はドサキンで、全く受けなかった。先日は妙に受けすぎて、何もしなくても大笑い……不思議な世界になった。今日のが本物じゃな……ああ、済みません、ネットに名前が無かったので……今度手土産を持って行きませんで……」
「私的な挨拶しないの……次は柳家蝠丸
「今日は『家見舞い』。汚い噺なのに、全然いやらしくない。この軽さはいい演じ手じゃな……今度手土産を……」
「また……先へ行きましょう。桂伸之介
「『ろくろ首』。悪くないが、やっぱり『3つだからごもっともごもっと』はほしいな……落ちが夏だけは休みをもらって、『蚊帳から首が出入りすると蚊が入るから』というものだった」
「はい、松旭斎小天華
「お馴染みのマジック。お隣が予約席だったが、空席だったので、後半から小母様がお座りになった。落語談義から、小母様の趣味でマジックについてのお話もした」
「芸の批評じゃないね」
「まあ、安心して見ていられる芸じゃな」
「さあ、トリは春風亭柳桜
「不死身の落語家……まあ、その宣伝から陰陽について……落語もやらないとってんで『小言念仏』。目が悪くて時計が見えない。わしが教えていたが、いよいよ落語に入って聞かれたので『いくらでも』と答えたら拍手をされた」
「しょうがないね」
「今度はねらって大きな掛け時計を鞄に入れておこう」
「はい、そういう訳で」
「飛び抜けてすごいのは無かったように思いますがね、悪いのが全くない。当然十分満足の行く一日でした」

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