11月3日 三笑亭夢丸 独演会

「さて、今日は、招待していただいた夢丸師匠の独演会へ」
「仕事があるのに、よく行けましたね」
「今日は会社ではなく、駅の近くでの仕事があったのじゃ。それで、退勤時間からすぐに列車に乗り込んで……開演5分前に会場入り……会社からだったら間違いなく遅刻していたな」
「例によって人生と同じ、きわどい世界ですね」
「さて、例によって弟子達から」
「最初は夢吉
「『平林』を演じた。普通はお巡りさんに注意されて名前を忘れるが、それでは随分新しいイメージになるな。ここでは犬に吠えられて忘れる。『たいらばやしかひらりんか……』という台詞も、一般には嫌になってくる演出だが、彼は面白がってやっていた。落ちも初めて聞くもので、声を掛けられて、
『あなたはたいらばやしさん、それともひらりんさん、いちはちじゅうのもーくもくさん、それとも……』
『私はひらばやしだよ』
『ああ惜しい、少しだけ違う』
 というものじゃった」
「続いて朝夢
「『湯屋番』。明るくて脳天気な高座、面白いな。動きが大きい過ぎるかなと思うが、若いからまだいいじゃろう。番台を手で作ってみせたり、仕草が多い。『軽石で顔をこすった』落ち」
月夢
「例によって、どこまで本当だか分からない怪しいマクラから、『悋気の火の玉』。仕込みのない落ち……普通は女将さんが嫉妬して『私の作った物じゃおいしくないでしょ、フン』てなのを重ねておくのじゃが……まあ、無くても違和感はないが」
「そして、いよいよ夢丸師匠の登場」
「『一人酒盛』。三遊亭圓生の録音を聞いたのが初めてだったが、戦争中の思い出とか、聞いていてこれは古くなるなと思った。わしにはすでに実感のないものだったからなあ」
「それで、夢丸師匠は」
「そうしたはっきりとした時代を無くしていた。これが未来に残る物じゃな。刺身をあつらえ、漬け物を出させ……そのあたりから、この男の勝手が見えてくるし、『お前と飲みたいんだ』の繰り返しが良かった。圓生はほとんどを飲む方の台詞だけで相手を感じさせようという演出だったが、夢丸師匠は先の台詞に相手の反応を見せ、だんだん相手の怒りを盛り上げた。そして、5合目をつけすぎたという場面で『何のためにお前を呼んだんだ』と言われて切れてしまい、落ちになる。後1合飲まずに終わった。これを後でシャアシャアとして飲むのだろうなと想像しておかしかった」
「はい、ここでお仲入り」
「先日広小路亭で逢ったおば様にご挨拶」
「仲入り後は、やなぎ南玉曲独楽
「素晴らしかった。独楽とバランス芸のコラボ……実に見事じゃ」
「そして、いよいよトリの夢丸師匠は……」
「今年の夢丸新江戸噺しの入選作『三文銭』。確かにいい噺じゃが、なるほど何らかの不足を感じる……ううん、わしは5回の応募で、3度まで最終予選に残ったが、まだ入選していない。残念賞の最高記録らしい。来年は入選せねば……」
「はい、がんばってね……それで、『三文銭』は……」
「まあ、メルマガの『さ』で……2,3年のうちに紹介……できるかな……ともかく夢丸師匠の素晴らしい語り口で満足満足の会となりました」
「はい、そういう訳で、ご報告まで」

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