10月7日 上野広小路亭
「さて本日は上野広小路亭へ」
「行きましたか」
「行きましたよ」
「で、いかがでした」
「前座は4日と同じ、三遊亭小笑の『桃太郎』、3日逢わざれば刮目して待て。すごくいい雰囲気になっていた」
「若いから」
「そうじゃな。それだけはっきり変化が見えるだけ、未熟なのだとも言える。もう一人の前座、昔昔亭A太郎も同じ『鶴』。これも前回のしらけた雰囲気から少し脱皮している。しかし、鶴の語源を教えて『つーっと来てルッと来て鶴だ、お帰り』と言った直後、確認をして相手が帰ろうとすると、『ゆっくりしておいで』……この矛盾が気になる」
「はい、これからプログラムに載っている人ですね」
「実はネットで出ていたプログラムとかなり変更が出ている」
「はい。まずは神田ひまわりの講談」
「『瓢箪屋裁き』。3人の放蕩息子から跡継ぎを選ぶというお話」
「続いては三笑亭可女次」
「先日は物足りなかったが、今日の『転宅』は素晴らしかった。お見事じゃ」
「東京丸・京平の漫才」
「いつものようなネタだが、今日はとてもテンポが良かった。上出来だね」
「三遊亭遊之介」
「『浮世床』から将棋と本。いかにも仲間達が集まって楽しんでいるって雰囲気でいいね」
「鏡味健二郎」
「お馴染みの太神楽……」
「点々はどういう意味です」
「ううん……まあ、いずれ説明するじゃろう。『お馴染み』と書いたが、手際もよく、なかなか良かった。ちょっとわしの気持ちにひっかかった部分があるのじゃが、ここではちょっと……」
「じゃあ、点々も書かなければいいのに……」
「そうかも知れない」
「仲トリは三遊亭圓輔」
「出し物は『紙入』。これも上々の出来」
「今日はみんないいですね」
「仲入りになると、出入り口に人が一杯……立ち見まで出る大入りじゃ」
「すごいですねえ」
「5年前にはお客さん3人という経験をしているがなあ……」
「はい。食いつきは昔昔亭健太郎」
「『松竹梅』。本来の落ちまでちゃんとやったが、練習風景の不足か、何か物足りない感じだったなあ……それに、手品などは、勉強会などで見せる芸で、こういう席では必要ないな」
「都家歌六」
「のこぎり音楽。素晴らしいなあ。今日はポップスの懐メロ。もちろん『アンコール』と叫んだら、お隣のお婆ちゃんが『いいですねえ』って声を掛けて下さった。夢丸さんのファンで、また来月の独演会でお会い出来そう」
「春雨や雷蔵」
「『殿様団子』。資料にはある……と思うが、聞くのは初めて……まだ隠れた落語があるかも……」
「三笑亭夢丸」
「へ、詰まらん物をお持ちしまして……わざわざお電話をいただかなくても……へい……」
「私的に使わないで……出し物は」
「『椿の喧嘩』。雰囲気を作るのはすごいなあ。『ドサキン』がずっとしゃべっていたが、この噺ではシーンとして聞き入ったぞ」
「新山真理」
「漫談だが、落語と同じように着物で座布団に座って……『奴さん』の踊りも」
「さて、トリは三笑亭笑遊」
「『祇園会』。実に面白い。前半のいかにもこの人らしい長い間の取り方、そして後半はテンポ良く……」
「みんな良かった訳ですね」
「そうじゃな。全体としてもかなり充実した一日だった」
「じゃあ満足この上ない」
「そのはずじゃが、この後もう一つイベントがあって……」
「はい、内田奈織ちゃんの演奏会」
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