9月4日 新宿末廣亭 夜席

「今日は仕事をサボって新宿へ」
「行きましたか……桂夏丸君の二ツ目昇進ですね」
「3時発の電車なら42分以上前に着く。12分に乗れば20分前着じゃ」
「計算が合いませんね」
「3時ちょうどは特別快速なのじゃ」
「そんなのがあるの」
「ところが仕事が3時10分まで抜けられず、やっと飛び出すが、会社から駅までのバスは3時ちょうど。この次は45分」
「あらら」
「3時23分のフレッシュひたちって特急に乗ると900円……だったかな……余計にお金が掛かるが、駅まで2キロあるから、とても13分では行けない」
「そうなると、どうするんです」
「3時30分に乗れば、新宿に4時56分に着く。末広亭まで10分。寄席は5時からなので遅刻は間違いないが、夏丸君の高座には間に合う」
「でも、会社から駅まで30分掛かるんでしょ」
「そう」
「20分しかありませんね」
「だから、走るしかなかった」
「走ったんですか」
「競歩のペースで25分じゃから、走る部分を作らないと20分にはならない」
「大変ですね」
「無事電車に乗り、空いている席を見つけて座るともう発車」
「まあ間にあって良かったですね」
「いや、疲れてしまって……居眠りをしたため、取手を乗り越してしまった」
「あらら……って、今日はいいんですよね……新宿行くんですから」
「そう。目を覚まして、あわてて飛び降りなくて良かった」
「大家さん、あわて者ですからねえ」
「さて、日暮里で山手線に乗り換えると雨……傘がいるかなと思ったが、普段の行いじゃな。表に出たらやんでいる」
「はいはい……さて、寄席の報告ですが」
「新宿駅から10分は掛かるのを7分で歩いたが、寄席に着いたときはもう遅刻で、前座は終わっていた」
「すると、プログラムに載っている人からですね」
瀧川鯉太君の『転失気』で、近所に借りに行ったところから……彼のは3度聞いているが、最初はすごく良かった。次はちょっと不出来」
「今回のは」
「まあまあかな……でも時間切れ……要するに時間の使い方が下手なのじゃ。聞き始めた部分、お使いの場面を省略出来るようになれば、ちゃんと落ちまで行くぞ」
「続いて宮田陽・昇漫才
「彼らのパターンがあって、日本の都道府県、アメリカの州を全部並べるというのがあるが、今日は中国の省や自治区を全部並べるもの。本当に安心して見ていられるようになった」
「さあ、ここで二ツ目昇進おめでとう」
桂夏丸君の登場じゃ。『馬の田楽』、少し混乱あり? しかし、落ち着いていたから、ネタを知らない人には分からなかったじゃろうな。去年8月9日のロフト寄席で聞いたが、あの時よりは人物描写がしっかりして、この噺なのにテンポも良くなっている。面白かった」
「はい。続いては古今亭寿輔
「いつものように客をいじって、『生徒の作文』からちょいと」
松旭斎小天華
「いつものマジックじゃが、手際がいいな。お隣のおじさんが分かり切ったネタに感心していた……すごい通じゃな」
桂米福
「『家見舞』、明るくていいな」
三遊亭圓雀」
「『浮世床』の『夢』、寝小便の落ち……こんな噺がが続くのは、ひどい客がいたのじゃろうか……」
「大家さんじゃないんですか」
「さあ……とにかく原因不明」
スティファニー
「これは若手女流マジシャンの総称……今日はマジック・ジェミニー
神田陽子
「『与謝野晶子伝』、彼女が鉄幹と結婚する経緯、そして『君死に給ふことなかれ』をしっかりと……もっと感動させていいのに、なぜ笑いに収めるのじゃろうなあ」
「仲トリは」
桂米丸師匠の予定だが、今日は新宿のホテルで木久扇木久蔵の襲名披露宴があるので、昔昔亭桃太郎師匠が代演」
「出し物は」
「『柳昇物語』じゃが、枕の笑遊の悪口がおかしかった。余計なことを言って人の気分を悪くするのはいけない……って、こんな話をしていること自体がそれだろう……って、面白いなあ」
「はい、休憩後の食いつきは」
「その三遊亭笑遊。もちろん桃太郎師匠の悪口から入って、おなじみの『寿司屋は楽し』」
「続いてぴろき
「いつもと同じギタレレ漫談……でも、面白いんだよな」
三遊亭遊三
「これもお得意の『替り目』、声の大きさ、雰囲気作り……本物だねえ」
三笑亭夢太朗
「『寝床』の半ばまで……最後まで聞きたかった。主人公が煙管を使いながら報告を受け、次第にいらついて来る描写が素晴らしい」
「そしてトリは」
夏丸君の師匠である桂幸丸木久扇パーティでステーキを食い損なったって、走って楽屋入りしたのが3分前と、息を切らして登場……しかし、落ち着かせてから『野口英世伝』をたっぷり。今日は明治の伝記が二つになった」
「そうなりますね」
「はい、写真は初めて夏丸君の看板が出た記念でございます」


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