8月29日 夏丸ろべえ仙花勉強会

「今日は仕事のため、この会には行けないという予定でしたね」
「それが、会社でぼけーっとしているので、後は引き受けるって言ってもらって……」
「しょうがないね」
「退勤時間の5分後に会社の前を発車するバスがあり、これに乗ると、何とか開演5分前に会場へ行けることが分かった」
「まあ会社の状況はいいです。勉強会の様子は」
「まずろべえ君の1席目。『かぼちゃ屋』だが、ひどいもの」
「大家さんの方がひどい言い方だね」
「じゃあ、少し優しい表現で……ただでさえ面白い噺を、よくもまあつまらなくしたものじゃ」
「もっとひどいや」
「これは与太郎の性格造りじゃろうな。感情的に動きすぎる。腹を立てる場面もあるが、本気で怒ってはならない。やはりどこかのんびりとした人間で、腹を立てても、相手は冗談だと思ってしまうような……」
「人間を作るってやつですか」
「落語はそれじゃな」
「続いて夏丸君」
「二ツ目昇進おめでとう……って、土曜日からじゃな」
「こちらは『富士詣で』ですか」
「これも人物が……みんな同じようじゃな……この噺の難しさは、登場人物がみんな同じくらいの年齢と考えられる。先達っぁんだけが少し年上のはずだが、うんと上でもない」
「ややこしい」
「そう。かみさんにちょっかいをかけられるのだから、先達っぁんが他の人より20歳も年上では噺がおかしい。かといって、やはり引率を任せられるのだから、みんなに頼られるだけの差がなければならない」
「ううん……難しい」
「そう。これから磨いてよくなるじゃろう」
「続いてろべえ君の2席目」
「『夏泥』、これは色々なやり方があるが……泥棒と相手の人物、性格がだんだん現れてくるのがおかしい。これは傑作になるかも」
「初めてお褒めの言葉が出ましたね」
「枕で『クイクイ』を演じたが、動物物まねから落語家の物真似にずれて……不思議な世界を作ってしまった」
「へえ」
「これで突然『クイクイ』という鳴き声に戻るのはどうかな……つい落語家さんの名前などでの落ちを考えてしまった」
「はい……まあ、ろべえ君の2席目は色々収穫があったということで」
「そういうこと」
「それで、トリは仙花ちゃんですか」
「今日は3本の笛を持参して、その成果を……一生懸命だが、人様に見せる芸ではない」
「これまたひどい言い方」
「いや、こういう勉強会は、今こういうことをやっていますということも悪くはない」
「あ、そうですか」
「まあ、もっと勉強してほしい」
「はい」
「さて、後はみんなで打ち上げ……夏丸君のお父様にごちそうになった」
「いつもたかるんだから」
夏丸君は9月上席で新宿末広亭、中席では浅草でお披露目じゃ」
「月末は」
「空いているらしい。19日には昼席で上野広小路亭の若手の会で食いつきじゃ。26日はこの勉強会……その他お仕事があったら紹介しておくれ」


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