8月26日 お江戸日本橋亭

「今日はお江戸日本橋亭へ」
「先日のは若手の勉強会、今回は本格寄席ですね」
「まず、前座は」
春風亭昇々、まだこれしか知らないというので『子ほめ』。師匠の昇太を感じさせる明るさがあるものの、同じ調子で進む。まあ、若手じゃから、これからこれから」
「続いて春風亭笑松……これも『しょうしょう』ですか」
「いや、これは『しょうまつ』と読む。『たがや』、テンポはいいがメリハリが不足している感じ、山場まで盛り上げてほしい」
「次は桂米福
「今日はこの人の2席。まずは『そば清』、主人公の性格がよく作られていて、お店に登場するだけで笑いが起こる。そばを食うしぐさもいい。ちゃんと積んである高さを計算し、見ていても何枚食べたな……という……」
「見ていて面白いということですか」
「そうじゃ。もちろんしゃべりがしっかりしているからじゃろうが、印象的な作品になったな」
「続いては桂南なん
「『佐々木政談』、この人もおかしいな。顔がおかしいし……失礼……芝居は本格、子供など描くと漫画的で……この噺では笑いをちりばめながら、落ち着いた雰囲気の奉行を見事に描いていた」
「仲入り後は、瀧川鯉朝
「『竹の水仙』、時代錯誤のくすぐりが入ったり、途中で演者に返ったり、いかにも現代的じゃな……今はこれがおかしいが、どこかで脱皮しなければならないじゃろう」
「おかしければいいんじゃないですか」
「いや、これで一つの作品として磨き上げねばならん。それには途中の脱線はなるべくなくさないと」
「そんなものですか」
「そんなものですよ」
鏡味正二郎
「おなじみの太神楽仙花ちゃんのを一昨日見たばかりじゃが、やはり手馴れた人は一味違う……同じ芸をやったから手際のよさや見せ場の作り方がよく分かった」
「さて、トリは桂米福の2席目」
「『佃祭』、自宅へ案内してから手をついて礼を言うかみさん。これは本物だと感じるな」
「本物の人情ですか」
「そう。1席目の『そば清』では笑わせてくれる人間性、こちらではしみじみとした人間の真実が感じられた」
「上出来ということですね」
「もっと高い評価をしてもいいな。本当に堪能できた。もちろん、『佃祭』も笑いたっぷりだった。本当にいい噺は、笑いだけではなく、先に述べた人情があるもの……わしが落語にはまったのも、円生の必ずどこかでほろっとさせる部分が入っているのにひかれたからじゃ」
「はい、本日は久しぶりに本格寄席への参加」
「そう、4ヶ月ぶりでした」

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