5月24日 夏丸ろべえ仙花勉強会

「そういう訳で……」
「どういう訳ですか」
「一昨日は会社の運動会があって……」
「運動会ですか」
「みんなでボウリングを……」
「運動会とは言えませんね」
「2日たった今日でも、まだ腰が痛い」
「年寄りが無理をするから」
「23日だったので、23位に豪華賞品が出たのじゃが、わしは1ポイント差の22位……何ももらえなかった」
「惜しかったですね」
「最後の10フレームで29本倒したのが行けなかった。1本残すのじゃった」
「はいはい」
「それからカラオケ……わしの持ち歌ロスプリモスの『ラブユー貧乏』から始まって、落語芸術協会の『花吹雪恋吹雪』、植木等さんをしのんで『スーダラ伝説』、さだまさしの『関白失脚』、美川憲一『駄目な時ゃダメよ』……」
「なんか、コメディソングばかりですね」
「殿キンと小林旭は時間がなくて……」
「はいはい、また今度……」
「それで終電が無くなりかけたので、同僚に、俺を送って行くんだから酒は禁止って……」
「飲ませなかったの」
「もちろんじゃ。飲酒運転で捕まったら可哀想じゃろう」
「……まあ、そうですが……」
「それで家に着いたのは1時、風呂入って寝て、いつもの通り5時に起きて出勤……」
「よく生きていますね」
「まあ、仕事中に寝れば取り戻せる」
「しょうがないね」
「ということで、本日はこれまで……」
「ちょ、ちょっと待ってください。ほら、タイトルは……」
「あ、そうか……忘れちゃった」
「勉強会があったんですね」
「そう。勤務が終わってから行くと、最寄り駅着と開演時刻が一緒。そこでちょっと早めに会社を出た」
「……どうやって」
「最近駅周辺で事故が多いから、万一のために視察してくるって……」
「見て来たんですか」
「見ていたら間に合わないじゃろうが……すぐに電車に乗り込んで……」
「本当にしょうがないね」
「それでも会場に着いたのがちょっと遅れ……ろべえ君の枕が始まっていた」
「はい。出し物は」
「『平林』。談志が、『たいらばやし』『ひらりん』とは読めるが『いちはちじゅうのもくもく』とか『ひとつとやっつでとっきっき』と読むのはおかしいと、演出方法について提言していたが、ろべえ君はそこの所実に説得力があった。後で聞いたが、自分の工夫ではなく、今は皆そのようにやっているらしい」
「進化しているんですね」
「そう、そういう話をしたら本人達も驚いていたなあ」
「続いて桂夏丸、大家さんが応援している子ですね」
「出し物は『あたま山』。短い噺をどうするかと思ったら、途中にカラオケが入る、他の落語が演じられる……まあ奇想天外。普通の寄席では絶対に出来ない。勉強会ならではのバージョンじゃな」
「面白いことを考えますね」
「これも彦六師匠の話をしてやった」
「はい、続いては」
ろべえ君の二席目、『雛鍔』じゃが、実によく出来た作品じゃなあ。ストーリーも完璧。植木屋夫婦の会話に、侍と若君が登場、この場面本当に侍口調にするか、侍の言葉を植木屋が説明する調子にするか……どちらがいいのかわしにも決断がつかないが……この夫婦に子供がからみ、今度はご隠居の登場……」
「色々な人が出るんですね」
「身分や立場の違う大人は自然に描き分けられるのかも知れないが、言葉などが全部違うからなあ……二人の子供の違いもはっきりしているが……それらをいい加減に演じると、本当に適当な噺になってしまう」
「で、ろべえ君のは」
「驚いたな……正直に言うと一昨年12月22日以来じゃろう……これほどうまくなっているとは……本人達は、毎月のもので、お互いの成長に気付いていないが、これならお客さんを呼べる芸じゃ」
「客を呼べるですか」
「そうじゃ。昨年は3人で出演するのにお客さん2人ということもあったそうじゃ……若手で人気もないからなあ」
「昨日は」
「一昨年20人という参加者を越える、25人。受付がいなかったので、タダで入った人もいるはずじゃから、もっといたはずじゃ」
「ここは20人が満員ですよね」
「そうじゃ。この日のトリの仙花ちゃんは客の多さにビビっていたな……寄席では満員で平気なのに、目の前でこれだけのお客さんがいるのに慣れていない」
「面白いですね」
「もちろん仙花ちゃんは曲芸、今日は五階茶碗に挑戦。昼席では失敗したというが、実に見事にやりとげてほっと一息」
「よかったよかった」
「それで打ち上げということで、3人を連れて食事。さっきのような意見を述べて……」
「お説教ですか」
「そこでアンケートがあるのじゃが、わしは整理してからしか書けない。だからその場ではあっさり。飲みながら説教をたれるという訳じゃ」
「来月はもう予定が入っているが、再来月は、わしがイギリスに行くので、帰ってくる日程に合わせて開催することが決定した」
「また……一人のわがままで日程を……」
「そういう訳で、一昨年までは若手を育てるために、我慢して聞いてやって下さいという挨拶だったが、今日からは、500円でいいものを出しますから、ぜひ応援して下さい」
「はい、今日はこれまで」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。まだあるのじゃ」
「何です」
夏丸君が二ツ目昇進の候補に挙げられている」
「お、いよいよですか」
「ところが、8月末まで前座の仕事が入っているらしい……すると、9月の昇進かな」
「楽しみですね」
「皆さん、ぜひ応援を。尚、夏丸君は30日まで新宿末廣亭で前座を勤めています。27日に地元で『群馬名人会』に登場します」
「はい、これで本当におひらき」
「もう一つ……いつも手伝いに来てくれていた古今亭ちよりんちゃんが二ツ目に昇進。おめでとう」
「そういうことですか」

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