5月4日 ミュージカル「みどりの指の天使」

「まあ、そういう訳で」
「どういう訳です……」
「3日は落語笑竜門、一度自宅へ戻り、4日の朝出発、家内の実家へ手みやげ持参で行き……」
「手みやげなんて黙っていればいいのに」
「まあ、持っていたということを記録しておかないと」
「はいはい、それで」
「お昼は新宿の某有名なお店のちらし寿司……」
「何というお店です」
「忘れた」
「……はいはい、それで」
「まあ、お祝いなので昼から一杯やって、30分ほど昼寝……まあ、昼から飲めるという幸せを満喫したのでございます……本日はこれぎり……」
「大家さん、まだ報告が……」
「あ、そうか……ええ、実は昭●音楽大学ってぇところが、川崎から新百合ヶ丘に移転しまして、その演奏会場『テアトロ・ジーリオ・ショウワ』ってのが落成しまして、このゴールデンウイークに記念の演奏会が行われているのでございます」
「はいはい……●で書いたのに、会場の名前でバレバレですよ」
「そこでわしも招待された訳で、ミュージカル『みどりの指の天使』に家内と一緒に出かけたと、こういう訳じゃ」
「ああ、そういう訳ですか」
「それでは本日はこれまで……」
「ダメですよ、引き延ばしは」
「はいはい。学校で何も出来ない子供チコが、仕方なく自宅で勉強することになった。庭師の小父さんが、彼の不思議な能力を見つけ出す。『みどりのゆび』を持っているチコは、種もまかないのに花を咲かせることが出来るのじゃ」
「はあ」
「彼はその能力を駆使して、町の人達に生きる勇気を与える。さらに、戦争まで止めてしまうのじゃ」
「ひい」
「ところが、親の仕事ってのが武器の製造販売という、要するに死の商人だった」
「ふう」
「信用は失うし、商売あがったり、会社がつぶれるという危機に瀕してしまう」
「へえ」
「……とまあ、こんなストーリーじゃ」
「ほう」
「いい加減に聞いているな」
「それで、ストーリーより、舞台そのものはいかがで」
「主人公以下主要人物以外は、町の人、囚人、スラム街の人、武器工場の人……って、何役かをこなす。全員が歌と踊り、タップダンスまでやる……すごい実力を感じさせるものじゃな」
「劇場もすばらしい。舞台の後方にオーケストラボックスがあり、演奏が遠くに見える。演技のじゃまになるかと思ったが、指揮を取る人以外は向こう向きなので気にならないな」
「色々考えてあるんですね」
「背景代わりのしきりはどんでん返しになっていて裏返して変化する。上から花が降って来るし、背景幕が何枚か上下したし、最後に主人公が空を飛ぶし……」
「色々やっていますね」
「会場を見てもらおうって点でも良かったのじゃないかな」
「はい。満足の会ですね」
「まあな……」
「何かご不満でも」
「いや、わしは桟敷席から見たかったのじゃが、S席しかございませんてんで、いい席で見ることに……」
「わがままですねえ」
「桟敷は全体の動きがよく見えるのじゃ。まあ、音楽用に作られたホールじゃから、S席でもなるべく後ろにしてもらったので全体が掌握出来た。よく考えて客席も出来ているな」
「はい。それでは、そういうことで」
「夜、家内の実家へ戻って一杯……」
「また飲んでる」

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