国立演芸場 4月15日

「前日の飲み会が大変で、二日酔いのまま、国立演芸場へ」
「大変そうですねえ」
「10時の列車で行ったが、ついいつもの12時開演と思いこんでいた」
「まだ頭が酔っぱらっているね」
「11時半に着いたが、実は1時開演のため、まだ誰も来ていない」
「当然でしょう」
国立演芸場の周りは食事場所といってもねえ……目の前にカレー屋さんとラーメン屋さんがある程度だから……裏の……こっちが裏なのかな……国立劇場へ出てみたが、やっぱり店はない」
「さあ、昼飯抜きになっちゃうかな」
「わしはいつもならあきらめて演芸場内でお弁当を買うのじゃが、今日は家内が一緒……ホテルを見つけたので入ると、フランス料理の店があったので、そこで食事」
「すごい」
「別にすごくもない。二人で2千円程度のランチじゃ。前日の飲み会が今一の中華だったからかも知れないが……とにかく値段の割にちゃんとした料理だった。オムレツとミートボールだが、どちらも味付けが上品でよかった」
「上品て……どんな味なんです」
「そうじゃな……簡単に言うと下品ではないというところかな」
「はいはい」
「そういう訳で無事に昼食を終えた訳で……本日はこれまで」
「お、お、大家さん、寄席の報告でしょ」
「あ、そうか……さて、戻って楽屋に行くと、ちょうど桂夏丸君が着替えを終えてお茶でも飲もうかというところ。こちらへ帰ったという正式の挨拶と、18日に行きたいが、仕事がだめなら……ってんで客席入り」
「無事に挨拶が出来たんですね」
「今日の寄席も、彼が招待してくれたのじゃ。だから家内を引っ張って来た。土産も渡してまあよかった、とほっとしたところで……本日はこれまで」
「大家さん、寄席の報告が終わっていませんよ」
「あ、そうか……何回かに分けて報告しようと思ったが、だまされないな」
「当たり前でしょ」
「さて、前座は夏丸君。鈴木みちを作の『表札』。昨年暮れの初演物だったか……もちろん聞くのは初めてじゃ。まずまずの出来かな。何となくいつもに比べてリラックスしていない雰囲気があった」
「次はプログラムに出ている人ですね。桂花丸
「『キャパクラ老人会』。老人ホームの経営が傾き、キャパクラに改装、婆さん達に接待をさせるという……キャラクターがあまりにも典型的。細かいくすぐりも見え見え……二本の手ぬぐいを使い分けてという演出は面白いが、全体には物足りない噺じゃな」
宮田陽・昇の漫才」
「代演でコントD51おばあさんコントじゃが、家内は花丸君あたりから眠いようで……コントはまあいつもと同じじゃが、客席とのやりとりがあっていい雰囲気」
「はい。三遊亭遊雀
「代演で桂平治師匠。この人の声なら目が覚めるじゃろうと言ったのに、先にわしの方が寝てしまった」
「お疲れですね」
「出し物は『酢豆腐』。平治師匠らしく気合いで行ってしまうのがおかしいね。代演を知りませんで失礼を……今度手土産を持って参じますので……」
「ネットを私的に使わないの」
「ブログは本来私的なものじゃ」
「ひどい言い訳。次はケン正木
和風マジック。傘を中心とした手妻じゃ」
「手妻は古いね。中トリは桂歌春
「臭い口調が聞きやすくなって来ているなあ。『垂乳根』途中までだったが悪くはない」
「仲入り後の食いつきは桂歌蔵
「代演で桂歌助師匠。へ、代演を存じませんで申し訳ないことを……今度手みやげを……」
「また私的に……って言っても無駄か」
「出し物は『桃太郎』。何となく急いでいる感じだったな。申し訳ないが聞き込みに入れなかった」
柳家蝠丸
「珍しい『お七の十』。題名の部分は省略されることが多いとわしのHPにはあるが、逆にこれを落ちにしていた。芝居を織り込み、師匠らしい面白い一席だった」
ボンボンブラザーズ
「二人の対照が面白いな。今日は髭さんが絶好調で、いつもの鼻の上に紙を立てる芸も、壁に寄せずに成功したし、帽子投げもすべて成功」
「すごい」
「そしていよいよトリ」
桂歌丸師匠」
宇野信夫作の『心のともしび』。話芸には堪能した」
「……『には』というのは、何か……」
「これは原作自体があまり面白くないのじゃ。というのは、無筆の意味、身分とか人間関係、社会というもの、それらがみんな分からなくなっている。だから父親が娘の為に字を覚えたいという気持ちが伝わらないのじゃ」
「難しい噺ということですか」
「それに、ストーリーにも山場がない。そのくせ、短気な浪人である手習いの先生と、賢明な父親、この父親が翌日は来づらいので酔った振りをして来る。話を聞いて先生が心を変える……演出もとてつもなく難しい」
「それなのに客席には伝わらない」
「俗に言う、もうからない噺ということになるな。とにかく、この人物の描写は見事なものだった。風邪をひいているというが、少しも聞きづらくならない。ニュースキャスターはすぐにひどい声になるが、これがプロじゃな」
「でももうからない」
「そうなのじゃ。師匠のためかも知れないが、客席がずいぶん暖かくなって、眠気をもよおすのも仕方があるまい」
「はい」
「わしの家内は……」
「何かありましたか」
「行きの電車で隣の女性が居眠りをして寄りかかられた」
「よくありますよ」
「寄席では隣の席の婆さんが居眠りをして、いびきをかくわ、寄りかかるわ……」
「あらら」
「居眠りをしていて、ボンブラになったら目を覚まして家内に話しかけて来る。それで歌丸師匠が出る時に帰ってしまった」
「変なお婆さんですね」
ボンブラの知り合いらしいな……まあ、それで、帰りには学生か社会人か微妙な男が居眠りをしては寄り掛かって来る」
「重なりましたね」
「これから家内を『眠り姫』と呼ぼう」
「呼ばない、呼ばない」
「さて、18日には夏丸君らの若手の勉強会、仕事がサボれたら行こうと思ったが、結局行けず……しばらくご無沙汰になるかなあ」

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