サッカー応援 昨年12月31日〜1月8日

「さて、仕事の関係で岡山県津山市に単身赴任をしておりますが、そちらにある別宅から歩いて5分のところに、作陽高校という学校がございます」
「はい」
「そちらと関係が出来まして……」
「どんな関係ですか」
「飲み屋で先生と知り合ったのじゃ」
「大家さんらしいね」
「そこで、落語のマニアだと分かると、実は卒業生に噺家がいるという話題が出た」
「へえ」
「わしの記憶にはないので調べたら、記憶にないはずじゃ」
「どうだったんです」
「わしの親しいのは落語芸術協会、歌丸会長の関係で、ここの噺家さんはほとんど知っているつもりじゃ。それから落語協会でも、菊之丞師匠をはじめ親しくさせていただいている……へへ、どうも、いつもお世話になりまして……」
「私的に挨拶をしちゃいけませんよ」
「それで、この噺家さんは、立川志の輔の一番弟子、志の吉君だった訳じゃ」
「発見したんですね」
「ちなみに、この学校はサッカーでは広島の青山選手、俳優の小田切ジョー君、マンガで『なると』ってぇのを描いている人なんかがいるらしいぞ」
「だんだん説明がいい加減になりますね」
「まあとにかく、休みに上京する時に志の吉君の会にメッセージを届けることを引き受けて、先生方からのお土産も持って行った」
「そんな訳で、作陽高校に関係しちゃった」
「そういう訳。それで、昨年の冬にもサッカー場へ家から近いというので、入り口に顔見知りの先生がいるから、声を掛けてくれたら入場券をくれると言う」
「それでホイホイ出掛けて行ったんですね」
「家内も一緒に行ったんで切符を2枚もらっちゃった……へへ、作陽の先生、お気遣いいただきまして……」
「また私的な挨拶」
「そんな訳で色々ございまして、今年も上京のついでに応援に出掛けた訳でございます」
「やっと今年の話題ですか」
「一番上の右にあったのが12月31日、1回戦の様子……実は相手は東京代表で、わしが学生時代住んでいた所の近く……応援の中に知人もいて、半分は向こうに行って『作陽倒せ〜』とやっていた」
「裏切り者だね」
「上の2枚目、左上は1月2日、2回戦に勝利して挨拶をしている作陽イレブン」
「客席が随分違いますね」
「1回戦は家内の実家そばにある駒沢競技場、2回戦は埼玉の駒場競技場じゃ。1回戦は2対1、2回戦は4対0で快勝じゃ」
「はい、そして3回戦」
「1回戦と同じ駒沢で0対0でPK戦……昨年同じ3回戦、同じ駒沢でPK戦で負けているからなあ……ちょっと不安はあったが、見事に勝利した。最後を決めたのが、3年生の村井君じゃ」
「大家さんと関わりがある人です。よかったですね」
「さて、わしはここで翌日から仕事があるので、この3日の夜行バスで津山へ帰った」
「忙しいことで」
「さて、5日は仕事で見られないはずだったが、こっそりインターネットテレビをつけたら快勝、そして翌6日も勝ってしまった……決勝進出じゃ」
「勝って『しまった』はひどい表現」
「それで、7日に出初め式に行くと、市で応援バスを出すという。先着120名だが、わしは特別に学校関係者のバスの方に乗せていただいた」
「図々しいですね」
「わしは謙虚じゃよ。バスで『おい、作陽はお茶も出ないのか』と言ったら、『どうぞ』ってペットボトルをくれた」
「やっぱり図々しい」
「さて、三つ目の写真」
「もう右上に隠れていますよ」
「東京へ着いて朝食をとったのが九段会館なので、ちょっと抜け出して裏の武道館を撮影したもの」
「続いて左上の写真は」
「急ぎ始めたな。予定ではお台場へ行く予定だったが、『生徒が興奮していて落ち着かない』と言うので、『じゃあ明治神宮にでも参詣に行ったら』と冗談を言ったら採用されてしまった」
「余計なお世話ですね」
「かくて、やっと右の写真に追いついた」
「競技場ですね」
「国立競技場、Jリーグの試合に招待されて以来じゃな。まだ20年経っていないと思うが……」
「関東に住んでいてもめったに行けませんよ」
「左下の写真が試合前の挨拶の様子」
「やっぱり前の2つのスタンドとは桁が違いますねえ」
「右下の写真を見ると、もっとよく分かるじゃろう」
「本当ですね」
「ここに来るのが憧れというのが理解できるな。甲子園は代表になればみんな甲子園で試合が出来るが、国立で試合が出来るのは全国で4校しかないのじゃ」
「それだけ重みもありますね」
「昔は高校野球も幾つかの球場でやっていたというが、1つの球場で50試合近くもやるから、日数も掛かってかったるいじゃろう」
「まあ、そういう意見もありますが」
「わしは茨城にある本宅から歩いて7、8分のところにある高校が甲子園に出て応援に行ったことがある」
「それじゃあ、甲子園と国立を制覇ですか」
「さあ、次はどこじゃろう」
「先のことはいいですから、この日の話を」
「村井君の見事なシュートがバーに当たって跳ね返ったのを、誰かがヘディングで決め、先制」
「誰かはひどいや」
「村井君とはちょっと因縁があるのじゃ。後は選手のうち半分くらいしか知らない」
「とにかく1点リード」
「その後相手のPKが外れたので勝ったと思ったなあ」
「それが正直な感想ですね」
「しかし、一方では選手の足が止まっていた。だからPKになるようなつまらない反則も出たのじゃ。同点にされて、ちょっと再リードは難しいと感じたから、逃げ切ってくれと祈ったのじゃが、結局逆転されてしまった」
「残念、後一歩という感じですね」
「応援団は再び夜行で津山に帰ったらしいが、わしは成人式に出席するのでここでお別れ」
「大家さんが成人式ですか」
「昔世話をした連中が成人になるので呼んでくれたのじゃ。それで、翌日新幹線で大阪へ出、津山までバスで戻った」
「岡山から津山線ではないんですか」
「去年の事故がまだ普及していない。どうせバスなら乗り換えの少ない方を選んだ。津山線の予定時刻より10分早くついたし、300円も安い」
「けちだね」
「すると、学校の前に先生方が並んでいる。これは選手が帰って来るのに違いないってんで、荷物を持ったまま校門まで行くと、大正解」
「それで左の写真……村井君と写真を撮ったんですね。図々しい」
「彼とは因縁があるのじゃ。県の決勝戦ではゴールも決められず、途中で足が止まって代えられた。わしは彼をほめたのじゃ。『君が素晴らしいから敵は君をマークしていた。だから君が2、3人をひきつけて他の人のゴールを生んだ。2点ともそうだったじゃないか』ってね」
「なるほど」
「今回の全国大会でも、彼は足を痛めていたので強いシュートは打てない。しかし、出場すると雰囲気を変えるし、今言った通り他の人のゴールのチャンスを生み出していた。大会を通して1本もゴールを決めないフォワードなのに、優秀選手に選ばれているのは、そういう理由なのじゃ。間違いない」
「そんな関係があったから、村井君も我慢をして、こんな写真につきあってくれたんですか」
「そうじゃ。しかし、半月ほどの間に関東へ3往復……本当に疲れた。それに、この日は朝に熱が出たので休みますと会社に電話を入れたのじゃが、校門前でテレビに映ったのを見た社員がいて、お節介にも上司に連絡してしまった」
「いよいよクビですか」
「病院へ行って通り掛かったらちょうどこの場面だっただけだとごまかした」
「背広を着ているじゃありませんか」
「応援用のサッカーネクタイ、昔の国体の出場記念のネクタイじゃ。テレビではコートを着ているところが映ったのでごまかせた」
「このページを読まれたら困りますね」
「大丈夫、わしの会社にはパソコンでHPを探せるほどの技術者はおらん」
「やれやれ」
「ついでだからキャプテンの石崎君とも」
「本当に図々しい……迷惑そうな顔をしていますね」
「そうかな……確かに学校の先生も疲れているからって、選手と一緒に写真を撮っていないから……」
「ひどいね」
「そういう訳で作陽高校応援のご報告、これを持って読み終わりといたします」

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