10月14日 夢丸独演会

「さて、MODEAの演奏会を終えて、国立演芸場へ移動」
「右の写真が演芸場ですか」
「そうじゃ。ビルなのじゃが、屋根のちょっとした部分に和風なものを取り入れているデザインも斬新じゃな……わしは夜にしか来たことがないので、これも後で加工して何とか見られる写真になった」
「自慢していますね」
「上野の寄席に行っていれば、ちょうど6時頃にここに着くのじゃが、演奏会にしたので、1時間早く着いてしまった」
「開演は」
「6時半じゃからまだ1時間半もある」
「どうしました」
「どこかで食事でもしようと思ったら、もう客が入っている」
「へえ、早いですね」
「そういえば、中で弁当も売っているし、それで済ましてもいいなと思って、入れてもらうことにした」
「手土産を持って、まさか開演前に夢丸師匠には会えないので、奥様にご挨拶。岡山からわざわざ来る馬鹿がいるというのは話題になっていたようで、すぐ分かっていただいた」
「それはそれは」
「そういえば一昨年は、エマニュエル・パユさん(現ベルリンフィルの主席奏者)との演奏会があって、片づけが終わってから駆けつけた時にはもう1人目が終わっていたという時間で、後ろの方
しか開いていなかった……今日は一番前をしっかりゲット」
「一番前がいいんですか」
「ニ列目以降は前の椅子との間が狭くて、足の長いわしのような人間にはちょっと辛い」
「はいはい」
「だから一番前にするのじゃが、ちょっと見上げる形になるので、首が疲れるというのが欠点ではある」
「まあ、いいです。落語の方は」
「まず春夢君が二つ目に昇進して夢吉になった。彼の『六尺棒』。親父に貫禄が出てくれば本物じゃな」
「次に朝夢の『つる』」
「つ〜と来てる〜と来てというのが随分長いな。こんなに引っ張ると、『あ、それで鶴だ』って分かりやすさはあるが、『今何かおっしゃいましたね』って雰囲気ではないな。どちらがいいのじゃろう。よく分からん。まあ、色々やってくれる方が面白い」
「続いて月夢の『おしくら』」
「これは最近聴いたことのない噺じゃな。『三人旅』の一部なのじゃが……最後に聴いたのは談志師匠が……ああ、あの時はトリなのに弁当喰っている客がいて、後に流行語になった『ヤダネ』と言って『勘定板』を演じた」
「余計な話ですね」
「まあ、三人の江戸ッ子が同じような人物になりそうな噺が、粗筋からも自然に人物描写が出てくるようになる。それをよく出していたぞ」
「さて、夢丸師匠の1席目は『権助魚』ですね」
「台詞もストーリーも無駄という無駄を全部削った作品だった。奥さんが権助と話していて、旦那が帰って来る。夫婦の会話になると権助が戻って、もう表での旦那との会話になる……一つ間違うと混乱しそうな演出だが、実に見事に場面が変わっている。すごい緊張感のドラマだった」
「仲入後は恋生の『強情灸』から」
「悪くないのだが……いや、かなりの上出来と言いたいのじゃが……」
「何かありましたか」
「マクラで汚い話ばかりして、もうわしはそれだけでゲンナリしてしまった。拍手をしないのはそういう意味で、落語そのものは上々だったと思う」
「続いて扇鶴音曲
「この人については、いつも言っている通りじゃ。三味線の腕もいいが、語尾の上がるのはどうも……」
「そしていよいよ最後の一席、夢丸師匠の再登場」
「今年の入選作『かがみ』じゃ」
「大家さんも最終予選に残って、雑誌などには出ていましたね」
「もうわざとらしいCM……さて、入選作の『かがみ』だが、なかなかいい噺じゃな。この出来ならわしの作品より上と言われても納得じゃ」
「どんな噺なんです」
「メルマガの『名作落語大全集』が今『かい』の所……
今年の最後か、来年の第1号になるはずじゃ」
「それではお楽しみに」
「画像はお分かりと思いますが、一番上が国立演芸場、左上が今回の本、右上がその本にいただいたサイン、そして左下がCDのジャケットでございます」

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