大阪の旅 9月30日
第3章 宝塚

「さて、こうして三度宝塚線に乗ったが、不安にかられて急いだので、時間に余裕が出来た」
「どうせ適当な時間で生きているじゃありませんか」
「そこで、終点宝塚まで足を伸ばし、温泉に……」
「温泉なんですか」
「実は、小林一三という人が、温泉客をあてこんで阪急電車を走らせたのじゃ」
「そうなんですか」
「それが男女混浴が禁止されて、風呂が使えなくなった。そこで風呂の上にフタをし、その上で女性達を踊らせたのがレビューの始まり」
「大家さん、すごい蘊蓄ですね」
「これはゴールデンウイークに東京で爺さんの手記を読んだ。帰りの新幹線で、たまたま古本屋で手に入れた永六輔さんの著書に、宝塚の始まりが書かれていたのじゃ」
「すごい偶然」
「この爺さんの手記では、そういうすごい偶然が何度も起こっておる。今年になって読み始めたのじゃから、月一回以上の確率で、どうしてこんな偶然がという事件が発生しているのじゃ」
「不思議ですね」
「帰りのバスで、昨日天神でいただいた落語家さんの本を読んでいたら……」
「何がありました」
「その小林一三という人が、戦後ここに寄席を作ったという話が出てきた」
「これまた不思議な偶然」
「実は歌劇団に男がいて、舞台に立つのを関係者に反対されたため、寄席で芸人さんと一緒にコメディを見せるためにそんなモノを作ったらしい」
「男がいたんですか」
「まあ、色々面白い話があるが、左の彫像がその小林氏じゃ」
「すごい人だったということは、ここまで読んでも分かります」
「永六輔さんの本ではもっとすごいことも書いてあるが……それはまたいずれ。さて、ここまでの道は『花のみち』と命名されているが、これが終わった所に手塚治虫記念館がある」
「突然マンガの世界が」
「まあ、宝塚でもベルバラとかあるから……記念館の地図も分かりにくいが、花のみちを右に降りて道路の反対側を見ながら歩くと、すぐ分かる」
「そうですか」
「右は表のモニュメント。登場人物達の手形が面白いぞ。中も見物はすぐ終わるので、わしは武庫川を渡って向こう側へ……」
「つまらない洒落」
「この川には噴水があったり、どうも自然でない、わざとらしさがあって……」
「まあいいでしょう」
南宝塚の駅から宝塚へ戻り、宝塚線で一駅、清荒神内田奈織ちゃんの演奏会じゃ!」

内田奈織ちゃん演奏会へ進む   表紙へ戻る   妙見さんへ戻る

inserted by FC2 system