大阪の旅 9月30日
第2章 妙見山

「さて、一度石橋駅へ戻りまして、ここから再び宝塚線、今度は川西能勢口で乗り換えとなります」
「今度は妙見山を目指して……何線ですか」
能勢電鉄というのじゃが、ネットでも時刻表が出ていなかったので、どのくらい掛かるか分からない。全部で往復2時間半の計算にしておいたのじゃが……」
「どうなりました」
「乗っていた車両が3つ4つの駅で誰もいなくなった……途中の駅が鼓ヶ滝という……西行法師のじゃろうか……車内の名所案内には滝が出ていないので分からない。あれば落語の舞台として取材に行くのじゃが」
「謎が多いですね」
「間もなく平野という駅……ここが爺さんの手記によると、全国に知らぬ人もないという平野水の生まれた所……仕方がないので駅の自販機で買っておいた」
「何です、それは……全国に知らぬ人もないって、私は知りませんが……」
「明治17年にここの湧き水を瓶に詰めて売ったのじゃ。最初の会社がつぶれ、他の会社が受け継いだが、明治40年にはこの工場で働く人が500人もいたという」
「へえ」
「その会社が変わった時に、『一つ矢サイダー』から『三ツ矢サイダー』に改名したのじゃ」
「あれって湧き水だったんですか」
「れっきとした天然水だったのじゃ、元は」
「勉強になりました」
「さて、心配した電車、無事30分ほどで目的地である終点の妙見口に到着。ここも不親切で、どこへ行けばいいのかって道しるべがない。やっと聞いて歩き出したが、徒歩20分でケーブルカーの駅に着いた」
「バスなど無いんですか」
「1時間に1本ある時間帯もある……微妙じゃな……右上の写真が駅に止まっているケーブルカー
「ほほえみって名前ですか」
「もう1本はときめき号じゃ。これは毎時0分、20分、40分に出ていると調べがついておる。大正14年の開通と説明されたから、わしの爺さんの登ったころはまだ無かった。歩いて登ったのじゃなあ……土地の人の話では、1時間もあればっておっしゃているが……それが線路の長さは660m、わずか10分で到着じゃ」
時代を感じますねえ」
「さて、ここで撮影したのが左の写真」
「何です、この輪っかは」
かわらけ投げじゃ。落語は京都の愛宕山じゃが、ここでも瓦を投げてあの輪を通すという……」
「へえ。大家さんもやったんですか」
「わしのコントロールではとても、そばにも寄らない」
「でしょうね」
「ここから今度はリフトで頂上へ」
「それが右の写真ですね」
「コスモスが見事じゃろう……左の枯れたように見えるのは紫陽花じゃ。この季節も見事じゃろうなあ」
「いいですね」
「この上に駐車場があるが、ケーブルカー、リフトを利用して来るのが王道じゃな」
「料金は掛かるでしょう」
「わしは周遊券を買ったので、大阪梅田から出発してそこへ戻るまで1500円以外は全部要らないはずじゃ。川口能勢口からの往復だけでも元はとれるぞ」
「計算高いね」
「さあ、頂上じゃ。妙見様にお参りして、その山頂から見た景色じゃよ」

「こうして妙見口まで戻ったのがちょうど12時」
「……前のページの滝も合わせてでしょう……すごい強行軍ですね」
「そうかも知れない。駅前でうどんをいただいたが、ここのお水がおいしかった。妙見様の水じゃ」
「へえ、売ってるんですか」
「いや、湧き水を自由に汲んで来るのじゃよ。わしも三ツ矢サイダーのペットボトルが空いたが、荷物になるので断念した。さて、食事を終えて電車に乗ろうと思ったら、何と、発車ベルが鳴っている。改札にカードを入れたところで鳴り止んだので諦めたが、電車が動かない。運転手が気付いて待ってくれているのじゃ。お陰で少しのロスもなく川西能勢口まで戻った次第でございます」

宝塚へ進む   表紙へ戻る   箕面の滝へ戻る

inserted by FC2 system