3月31日 古今亭菊之丞独演会

「そういう訳で、今日は市川行徳の菊之丞独演会へ」
「行ったんですか。まあ暇を持てあましているから」
「口が悪いな。息子が医者に行くので車に乗せてもらったが、風がひどかった」
「菊之丞師匠は嵐を呼ぶ男って評判でしたね」
「今日も大風じゃ。折角早めに送ってもらったが、電車も影響を受けて遅れ、結局早く出た分だけがロスタイムで差し引きゼロになった」
「普段の行いが悪いんですね」
「行徳の駅前で、ちょっと贅沢に海鮮丼。まあ、ネタが新鮮でぶ厚いから、100円寿司の値段でこんないいネタが食べられたと思えば安かった」
「変な計算で納得している……けちだね」
「お前は行徳のまな板だな」
「……何ですその行徳のまな板ってぇのは」
「ここは青柳が名物だった。そこのまな板だから、バカですれているってんだ」
「うまいね」
「けなされて喜んでやがる。これは夏目漱石の洒落だ」
「大家にしちゃあうますぎると思った」
菊之丞師匠の独演会。出し物は『浮世床』から本と夢、それに『不動坊』じゃ」
「お得意のネタだね」
「やはりいいな。本物の味は、ここでどう説明しても言いつくせない」
「本当は説明できないんだろ」
「そうじゃ。これを的確に表現できるくらいなら、わしはプロの評論家になっている。まあそういう訳で」

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