8月12日 上野広小路亭

「今日は上野広小路亭へ行った」
「目的は」
歌助師匠にご挨拶じゃ」
「例によって遅刻したとか」
「寄席の後、親戚の者と食事会を予定していたが、携帯電話の充電が切れてしまった。わしのは最新機種で、家族の充電器では充電できない。そこで電話屋さんで充電したのじゃ」
「それで寄席ですが、前座は……」
冨多葉君の『ラブレター』が始まったところから聞いた。面白いが、昔痴楽が演っていたのと全く同じじゃ。中に挿入されている歌がもう半世紀も前の歌じゃ。これを代えなければ新しくならないような気がする」
「さて、前座の後は春風亭柳太ですか」
「『皿屋敷』じゃったが、東京のより上方の型に近いものじゃった。珍しいな。テンポもよく、なかなか良かったぞ」
「次は春風亭鯉枝
「英語の『授業風景』を演じたが、テンションが上がらず、最後まで面白くなかった。今夜わしが拍手をしなかったのは彼だけじゃ。リズムが同じ調子で進んではいかん。どこかで山場がなければ……」
「その後は」
ぴろきの『ギタレレ漫談』…面白いキャラじゃな。『ヒヒヒ』という笑い声と、『明るく陽気に行きましょ』の歌は一度聞いたら忘れられん。ラジオでは何度も聞いているが、生で見たのは初めてじゃ」
「続いてお目当ての桂歌助
「『牛ほめ』だったが、与太郎と親父の会話、叔父さんとのやりとり……場面転換のスムーズさ、なかなかじゃな」
「それから桂富丸
「出し物は『西行』。こちらは漫談風に世間話で終わったが、悪くはなかった。客席の共感を得られたということじゃな」
「歌六さんののこぎり音楽
「いや、残念ながら代演じゃった。相撲漫談一矢じゃった」
「それは残念でしたね」
「まあ、歌六ファンとしては残念じゃが、一矢も面白かったぞ」
「それから三遊亭栄馬で仲入り」
「『替り目』じゃった。後に遊三が出るから、そちらで聞けるかなと思ったネタじゃが、仲入り前で気合いも入っていたぞ」
「仲入り後は春風亭昇輔からですね」
「『反対俥』……人力が方向転換するのに横を向いたり、後ろを向いたり……一回転は失敗したが……まあ、食いつきとしては悪くはない……しかし、芸で引きつけてもらいたいなあ」
宮田章司売り声
「わしの朝顔売りから始まって、リクエストが次々出たので、いい調子で進んだ」
柳家蝠丸
「いいねえ。この数年すごい伸びを感じたが……もっと人気が出ていいのに、顔が悪いのかなあ……」
「失礼ですよ」
「今日は『宮戸川』だったが、何をやっても生き生きとして、雰囲気を作り出す。本当にいいぞ」
三遊亭遊三
「お得意の『替り目』が先に出たので、何をやるかなと思ったが、『青菜』じゃった。なるほど、柳陰と熱燗の飲み分け、鯉の洗いとイワシの塩焼きの食べ方の違い……色々見せる落語だと分かった」
松旭斎八重子マジック
「代演で健二郎さんじゃった。いつもの通りじゃが、安心して見ていられるな」
「トリは三遊亭笑遊
「ううん……昨年まではやる気があるのかしらって、ふてくされたような雰囲気が嫌だった。今年は芸はきちんとやって、なかなかいい。今日は6日と同じ『片棒』だったが、トリなのできちんと最後まで演じた。ちょっとしたくすぐりに新しい物もあり、最後まで引きつけていた。素晴らしい出来だったぞ」
「満足の一日でしたね」
「そう。この後親戚との飲み会が予定されていたので、秋葉原で時間をつぶした。新しいカメラを買ったが、過去を撮すことは出来ないので、今日は写真無しじゃ」

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