8月6日 上野広小路亭

「結局上野の寄席へ行って来た」
「そうですか。何か、3日間出掛けて、3日とも夏丸君の高座に間に合わなかったとか」
「1日は2人前座だと知らないで12時ちょうどに着く予定で行って遅刻。4日は間に合うように出たのに、電車の事故で遅刻。右上はその写真じゃ」
「大変な事故ですね」
「まあ、訓練なのじゃが」
「何だ」
「そのせいかどうか、いつもなら40分で着く電車が丸1時間かかった。それて遅刻」
「今日は」
「駅に着いたら電車が事故の影響で20分も遅れておった。4日と同じ結果で遅刻」
「大変でしたね」
「帰りも面白かった。5時ちょっと前に上野駅に着いて、5時5分の取手行きに乗れると思ったら、4時16分の水戸行きに乗れてしまった。お陰で、帰りは予定よりも10分ほど早く着いた」
夏丸君は」
「4日と同じ『ドアの声』じゃ。でも今回は隣の奥さんとの会話から聞けた。男2人と女2人、全部同じくらいの年齢で、描き分けるようになると芸域も広がるな」
「もう一人、やっぱりおなじみの喜太郎君」
「今日は『』じゃった。狸が人間と話をするのは不安じゃろう。そのオドオドする雰囲気がもう少しほしいな」
「次は……ネットに出ていたのと予定が変わりましたね」
「まず三遊亭笑遊じゃ。この人は暗い雰囲気を持ち味にして、むっつり助平という雰囲気をキャラにしているから、時々困ったなということもある」
「今日もそうでした」
「いや、今日は子供がいて、上品に演っておった」
「出し物は」
「『片棒』じゃった。3人兄弟ということで始めたが、2人目のおにぎやかしで終わった。20分の予定を間違えたのじゃろうか、15分で終わった」
「次が笑福亭里光
「その分枕を長くしていた。苦労しているな」
「ネタは」
「『犬の目』じゃ。東京落語では全く見えなくなって医者に行っている。『目は見えないが、風が変わって通りに出たのが分かる』とか、なかなかいい台詞もある」
「この人は鶴光の弟子で、上方落語ですね」
「そう。こちらはまだ見えるのじゃ。まあ、こちらの方が本当じゃろうが」
「出来は」
「悪くはなかったな。たまたまファンの方からいただいた録音で米朝師匠のを聞いたばかりじゃった。手順は同じだが、ちょっとしたくすぐりに新しい物も加えておった」
「次は桂歌若
「『独身禁止法』じゃ。37歳になって、まだ縁がなく結婚できないという枕から、自然な流れを作る。笑点時代から注目はしていたが、どこかで化けるかも知れんな」
「どうしたら化けますかね」
「結婚じゃな。どこかにいい相手はおらんかな」
「次は松旭斎八重子マジック
「紐を使った物を幾つも並べていた」
瀧川鯉太
「子供がいるので『転失気』、いいネタじゃ。子供にも分かる誇張もあり、大人も堪能した」
新山ひでや・やすこ漫才
「新ネタで、おかしかった。寿司屋の注文に対して美空ひばりの歌で応えるという……寿司屋役のひでや、歌が混乱してやすこが教えている。仕方なく客席で歌ってやった」
「それはそれで面白いですね」
「仲入前は三笑亭茶楽、『お客様に合わせてネタを』と言い、『今日は上品な人が多いので間男の噺を』ってんで『紙入れ』」
「おかしな導入ですね」
「しかし、子供もいるのによくやるね……そういえば前も同じことを言って同じネタを演っていたな……得意なのかも知れないが、子供が母親に尋ねて困っていたぞ」
「食いつきは神田紅の講談」
「『四谷怪談』だが、我々の知っているの話とは随分違った」
翁家喜楽太神楽
「いいねえ。健二郎と同じ、傘の上で色々な物を回すネタがあるが、喜楽は座ってやる。まあ見事な芸じゃ。高い所の水をまく、噴水の芸で、わしと子供だけが濡れてしまった」
「次は三遊亭円馬
「子供がいるのに気を遣って、『桃太郎』。子供が親に話すくすぐりに目新しさがあった」
「それから、お待ちかね、三笑亭笑三
「夏の海・山の色々。子供にも気を遣う、笑三師匠らしい高座じゃった。考え落ちで、どういうことだって、考えて帰って行った……わしの十八番じゃった『たっぷり』が出ずに終わった」
「続いて春風亭美由紀三味線漫談
「歌と三味線、今日は本当にいい雰囲気じゃった。子供がいても『雷様』を歌った」
「いいですね」
「踊りもあって良かったぞ」
「そしてトリの山遊亭金太郎
「何と『死神』、男との交渉から、医者としての商売、明るく心地よく聞かせる。それが、蝋燭の場へ行ったとたんに、雰囲気を変えた。安心したため息で消してしまい、ばたりと倒れた。そのまま幕となっても面白かったな」
「今日は褒めるネタが多いですね」
「うん、良かったな。もう一回行ったら評価が変わるかも知れないが、見応えはあったぞ」
「ぜひ皆さんもお出掛け下さい」

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