8月4日 上野広小路亭

「今日は上野広小路亭へ寄席見物でしたね」
「先日(1日)、桃太郎師匠と約束をしておったのじゃ」
「顔ぶれは1日と同じですね」
「まずは桂夏丸君じゃ」
「ああ、若い元気な子ですね」
「ぜひ育ってほしい。やっと高座が落ち着いて見えるようになったが、まだまだこれからという若手じゃ」
「1日と同じ台詞ですね。今日の出し物は」
「古城一兵作の『ドアの声』じゃった。昔、米丸師匠で聞いた覚えがある」
「新しい物に挑戦していますね」
「そうじゃな。しっかり勉強してほしい」
「もう一人の前座が昔々亭喜太郎
「出し物は『饅頭怖い』。前座としては上出来じゃな。これも先日と同じコメントじゃが、もっと人物が描かれるようになるのが楽しみじゃ」
「続いて二つ目の春風亭べん強
「1日と同じ『初天神』じゃった。しかし、一日のたどたどしさに対して、今日は落ち着きを見せておった」
「続いて桂うらら
「今日の出し物は『幇間腹』、明るい調子がいい。先日の漫談で、こんなのばかり演っているのかと思ったら、とんでもない。なかなか見応えのある一席じゃった。幇間の喜怒哀楽も描いておった」
「はい、続いてコントD51、お馴染みお婆さんコントですね」
「いつもの通りじゃが、これはもう安心して見ていられる」
「続いて春風亭柳好
「なぜか1日と同じ『青菜』じゃった。悪くはない……しかし、同じネタが続くと疑問を感じるな。わずか5日じゃないか」
「次は神田松鯉の講談」
「『山内和豊の妻』、来年の大河ドラマじゃそうじゃよ。いい声じゃった」
晴乃ピーチク
「お馴染みの似顔絵漫談
「仲入り前が桂小南治
「これまた1日と同じ『ちりとてちん』。いいのじゃが、やはりわずか5日に同じネタ……松鶴師匠(6)が、トリとして同じネタを続けたことがある。また同じ噺だというのに、どこが同じだと反論していた。同じネタでもその日その日の客席に合わせて枕が変わり、中身も変化する」
「この席はそうじゃないんですか」
「枕から、経緯までほとんど違いがない。わしも明日突然暇になったが、これではまた明日も来ようという気にならない。もっと勉強が必要じゃ。わずか5日じゃろう。3つしか持ちネタがないのなら仕方がないが」

「ここでお仲入りでして、後半の食いつきは春風亭昇乃進
「『課長は辛いよ』じゃった。片言しかしゃべれない現代娘、アメリカかぶれの男……典型的な人物を配置しているが、これは人物を描いているのではない。1日には『まだ洗練する余地がありそう』と言ったが、何か今の程度で満足しているような気がしてならない……もっと伸びないと行けないのに」
「続いて東京丸京平漫才
「まあ、いつもの通りじゃ」
「それから春風亭柳桜
「『小言念仏』じゃった。念仏のリズムを単調に演じる人もいるが、微妙な変化があり、面白かった」
「次は三遊亭小圓右
「『湯屋番』、ちょっとしたくすぐりに目新しさもあり、上出来だった」
「それから鏡味健二郎
「おなじみの曲芸、いい雰囲気じゃ」
「そしていよいよ、トリの昔々亭桃太郎
「演目は……『唖の釣り(上野の釣り)』だった。次々入る桃太郎ワールドのくすぐり」
「いいんですか」
「現代的な逆は落語の時代とはずれていると感じることもあるが、前に出ている人達に、こういう工夫をしているのかと聞きたいね」
「それで楽屋へ」
「お茶をいただいて、喫茶店でも行こうってことになった。夏丸君と喜太郎君も一緒じゃ」
「どんな話が出来ましたか」
「芸術について」
「へえ……」
「わしの感じた寄席の行き詰まり、不勉強、そういう話が出たが、固有名詞の連続なのでここで書くのはちょっと……みんなでカレーを食べてお別れした」
「そうすると明日は」
「お休みじゃな。6日に今度は笑三師匠などを訪ねて行こうかと思う。夏丸君は10日まで前座を務めるぞ」

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