3月5日 工藤淳子演奏会 & 菊之丞独演会
「さて、今日は大変だったようですね」
「昨日から喘息がひどくて、倒れてしまった」
「しめた。そのまま息を引き取れ」
「そうはいかない。仕方なく早退して医者へ行ったら、点滴を打ってくれて体調が少しよくなった」
「残念」
「それでお出かけじゃ」
「例によって行き当たりばったりの行動ですね」
「まず銀座で、同郷の工藤淳子ちゃんがデビューする記念のパーティじゃ」
「ファゴットの女の子って珍しいですね」
「そうじゃな。それだけに話題になると思うよ。グリエール、チェレプニン、それにフートの『大きな古時計』による変奏曲、アンコールにウエッバーのノーシントンの牧場を演奏した」
「『大きな古時計』は知ってますが、後は分かりませんね」
「クラシック・ファンならグリエールの名前は聞いたことがあるじゃろう。アンコールのウエッバーは今話題の「オペラ座の怪人」、「キャッツ」でお馴染みの作曲家の父親じゃよ」
「へえ。それで、演奏はどうでした」
「プロなんじゃから演奏は上手くて当然じゃが、話はまだ駄目じゃな。ピアノの白石光隆さんがフォローしていたが、内気な様子じゃ。今時珍しい子じゃのう。次の曲をど忘れしたり、おかしかった。しかし、本当に人柄の良さが感じられたぞ」
「初めてのお披露目ですから仕方がないですね」
「ああ、これから上手になるじゃろう。期待して見守って行こう。慣れて来れば、もっと親しみ易い曲も演奏するようになるじゃろう」
「右がジャケット、下がサインですね」
「ま、そういう訳じゃ」
「さて、その後、阿佐ヶ谷へ行って、食事ですね」
「昨夜は『月○海』というお店でコースメニューを作ってもらった。実はこのお店も、工藤淳子ちゃんと同じ故郷の魚料理を味わわせてくれるお店なのじゃ」
「どんなメニューでした」
「最初はおきゅうと」
「おきゅうと……何ですかそりゃ」
「エゴノリという海草じゃ。これを寒天や蒟蒻のように固めたものじゃ」
「土地の名物ですか」
「そうじゃよ。続いてお刺身が5種類。竹麦魚(ホウボウ)をポン酢で食べるのが面白かった」
「面白いですね」
「マグロとエビをブロッコリーと一緒に春巻の皮で巻いてマヨネーズであえたもの。大分地鶏の唐揚げ、うまかったぞ」
「聞いているだけでよだれが出ます」
「みっともないからおふき」
「ここはお茶しか出ませんから」
「次は甘鯛と大根の煮物。ちょっと甘いがこれが九州の雰囲気だな」
「ここでジャコ飯じゃ。梅しそのご飯にちりめんじゃこを乗せてある。これにお吸い物がついているが、4、5種類のキノコが入っている。面白かったな」
「なかなか贅沢なものですね」
「最後にゆずのシャーベット。表の雪を取って来たのかと思うようなサクサクとした食感が見事じゃった」
「これでいくらです」
「2620円じゃ。フルコースじゃから仕方がないのう。実は女房のお母さんを招待したのでな」
「気を遣ってますね」
「しかし、割引券を持っていったから、ビール代がただになった」
「贅沢という割にセコイですね」
「それから菊之丞師匠の独演会に行った」
「例の嵐を呼ぶ男ですね」
「そうじゃ。同じ阿佐ヶ谷の寄席では噺の最中に落雷、初石では大地震、もう一回は近所の火事……」
「地震、雷、火事ときて……あとは親父ですね」
「そうじゃ。わしは大雪になると思ったが、幸い雪は上がった」
「いかがでした」
「前座はぼたんの『転失気』じゃ。人物の変化に乏しかったな」
「菊之丞師匠はどうでした」
「悪い訳がなかろう。今更細かな所演について説明する必要を感じない。見事なものじゃ」
「出し物は何でした」
「一席目が『幇間腹』、後が『崇徳院』じゃった」
「二つとも若旦那ものですね」
「しかし、前が放蕩息子、後は純情な息子。描き訳が面白かった」
「土産を持って行ったんですって」
「菊之丞師匠には、菊之丞応援ページの抜粋、リリカ寄席の人達には「LIRICA」をデザインしたパズルを持って行った」
「そりゃ良かったですね」
「その後黒門亭でお会いしてお礼を言われた」