聞き手:メールマガジンを発行したきっかけは?
越智:ええ、子供の頃から落語が好きで、こんな人間になっちゃったんですが、社会人になってから題名の一覧480を作り、そのあらすじなどのワープロ化を始め、20年掛けて改訂、(途中までですが)ほぼ今の型に落ち着きました。 職場でメルマガを出すというので、便乗してメルマガ発行となったのです。人生と同じで安直ですね。その間に資料も手に入れ、読者のみなさんからの情報もいただいて、紹介したい落語は約2千席に増えています。
聞:メールマガジンの内容を教えてください。
越:毎週原則として1席ずつ、50音順に発信しています。この6月で3年半になりますが、まだ「え」なんです、ええ……2千席だと40年掛かりますし、小噺もありますから百年は続けなければならないと思っています。詰まらないことに人生を掛けているって?笑われて幾らの世界ですから・・・。メルマガではその落語の「あらすじ」、出典と演者の工夫や歴史を書く「成立」、演じ手か聞き手の「ひと言」、それにその落語から思いつく「うんちく」を配信しています。
聞:ずばり、落語の魅力を教えてください。
越:人間です! 落語の人物はいい人も悪い奴も、一生懸命生きている。笑いだけの世界ではありません。噺が終わったのに、客席がみな涙ぐんでいて拍手もできないということも体験しました。人間の喜怒哀楽の全てが描かれる、それが落語です。
聞:落語、と言えば寄席ですが、ナマで聞く落語のよさとは?
越:やっぱりビールはナマです! いえ、落語、落語ですよ。登場人物の人生に演じる噺家の人生が裏打ちされて来ます。だから年寄りがうまいのかねえ。同じ噺でも、演じる人によって世界が代わるし、同じ噺を同じ演者がやっても毎回、違って来ますよ。客席の雰囲気で代わるんだから、聞いている我々も芸を作り出す大切な要素なんです。いい客ならいい芸を堪能出来ますよ。セコな(悪い)客の時の逃げの噺も面白いことがありますがね。
聞:落語はその時代を反映すると聞きますが、それはなぜですか?
越:たかが落語に難しい質問しないでよ・・・それは落語が生きているからじゃないかな。新作は現代の抱えている問題を浮き彫りにするが、古典だって、代わることのない人生や人間という物を映し出しているから現代に生きるんでしょうね・・・ま、そんな面倒なことを考えるよりね、やっぱり落語なんだから楽しくなくっちゃ。笑いの中に時代や人生という大事な物を描くのが面白いんですよ。
 そろそろお時間でございます。お後がよろしいようで。
聞:ありがとうございました。

2004年6月11日、melma!マガジン、発行者インタビューに掲載されたもの
「メルマの真実」には、実際のインタビューの速記が……

inserted by FC2 system