P.D.Q.バッハ「アイネ・クライネ・ニヒト・ムジーク」他

 さて、P.D.Q.バッハの傑作を紹介。ネタは前のと同じですのであしからず。
 「管弦楽のためのクオリドベック」は協奏曲風の3楽章から成る作品で、常に2つの名曲が重なって進みます。この曲がすごいのは第2楽章。まずベートーヴェン交響曲第1番のメヌエットがゆったりと始まります。4小節後、交響曲第2番のメロディが重なり、更に4小節後第3番「英雄」のメロディが……ってんで、ベートーヴェンの交響曲が全部、9曲積み重なって行くのです。そして、そこにブラームス1番ベートーヴェンの第9をもじったメロディで、第10番と呼ばれましたね)が重なってしまうのです。10曲がわずか2、3分で聴けるのですよ、お得ですね。曲がプツッと止まると、ストラヴィンスキーペトルーシュカ』に乗ってプッチーニ蝶々夫人』の「ある晴れた日に」が流れる。これが終わって、何とベートーヴェン交響曲第5番「運命」の第2楽章が始まりますが、4小節でプツッと(きれいな終止音で)終わってしまいます。これは大爆笑。
 もう一曲、これが私の最大のお勧め。「アイネ・クライネ・ニヒト・ムジーク」です。モーツァルトの名曲は「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」、「小夜曲」と訳されて「ばーかばーかエヘン虫」などでお馴染み……何て紹介でしょうね、情けない。「ニヒト」は英語なら「ノット」つまり直訳すると「小さな夜の音楽ではない(小夜の非音楽)」となるのです。
 曲は、管弦楽のためのものですが、弦楽器は何と!その「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」をそのまま少しも変えずに演奏するのです(第4楽章で1ヶ所フェルマータがつくだけ)。木管金管がそれに全然違う音楽を乗せるのですよ。
 第1楽章、4小節の音型の後、乗ってくるのがクラリネットによる「藁の中の七面鳥」、以下次から次へと名曲のオンパレードなのです。第1楽章の最後では、弦楽器の終止形の音と半拍ずれて管楽器が下属音を鳴らす……要するに、ド(ソ)ド(ソ)ドードドド(ソ)で終わる。ドは原曲、括弧のソは無理に付けた管楽器。
 ううん、岩城宏之先生が書いているが、音楽を文章で書くのは無理がある……そういう訳で、4楽章まで、全てが木管金管の名曲メドレーになっているという……本当に面白い曲でございます。

inserted by FC2 system