ホフナング音楽祭

 1956年11月13日、ロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールで行われた第1回ホフナング音楽祭。企画したホフナングは漫画家、58年には2日にわたる第2回が開催されましたが、翌年、ホフナングは交通事故で亡くなり、死後2年たった61年に第3回が開催されたのです。これを組み合わせを変えて3枚のレコードが発売されたのは20年ほどたってから。最初のものは「びっくり!」交響曲と「レオノーレ」序曲第4番に、原曲をカップリングした(余計な)サービス盤でした。当然最後の3枚目になると、日本人にはなじみの薄い作品ばかりで、人気はなかったようです。
 その後80年代後半に復活すると、日本でも演奏会が開かれました。CDで出たのは88年にロンドンで行われたもの。「びっくり」はとにかく笑える。知的なのは「人気協奏曲」、オーケストラがチャイコフスキーを始めると、ピアノはグリーグで応える。オケが美しいラフマニノフを演奏すると、ピアノはガーシュウィンになっちゃう……という名曲のハシゴが続きます。やがて、グリーグのピアノ協奏曲でカディンツになるが、メロディは「ビヤ樽ポルカ」。フィナーレはオケとピアノがどうしてもタイミングが合わない……というよく出来た曲です。
 同じネタで作られたのがヴァイオリン協奏曲。指揮者と主催者がそれぞれソリストを呼んだため、2曲を同時に演奏することになるのです。ただ、最後に指揮者とソリストが仲直りをし、男が弓を持ち女を抱く、女も右手は男の肩に手を回して左手でヴァイオリンを操るのです。見事な芸なのですが、演奏中にキスするのが、内気な私には恥ずかしくて見ていられないのです。
 日本公演は平日の夜、横浜だったので、仕事を終えてから駆け付けてもフィナーレに間に合うかどうか……断念しました。その代わり、展覧会は行きました。ホフナングさんが漫画で描いた珍楽器、ビールが出るテューバとか、そういう物が展示されていてうれしかった。
 「水まきホース協奏曲」という傑作がありますが、実はモーツァルト(父)のホルン協奏曲。水道のホースにマウスピースを付けて演奏するもので、見事なテクニックを披露しています。最近はどうもいい音が出ないというので、ホースを少しだけはさみで切る、とたんに素晴らしい音になるという演出をしています。
 さて、ホフナングが漫画家だと紹介しましたっけ……今でも楽器店で楽しい絵葉書が40種類ほど売っています。

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