音楽の捧げ物

 学生時代にPCM録音というのが出て……私はさっぱり分からないのですが、これは今でいうデジタル録音らしく、何度か録音を繰り返して鮮明さが落ちないという……その体験版レコードに入っていた「3声のリチャルカーレ」、アカデミー室内楽団の演奏でした。指揮はオーリアコンブ。これを何とフルートと弦楽器という編曲で演奏していた。これが新鮮でした。バッハの「音楽の捧げ物」という作品の1曲だというので、さっそく全曲を購入、最初がこの「3声のリチャルカーレ」で、最後は「6声のリチェルカーレ」、真ん中に「トリオ・ソナタ」を置くという曲順も新鮮でした。
 これは王の作曲した主題をもとにバッハがフーガやカノンに編曲したという作品なのです。
 さてこの中にパズルがあります。1音の旋律があるだけの譜面なのですが、例えば、ト音記号と一緒にヘ音記号が上下逆さまに書かれている。演奏するときはト音記号で普通に、ヘ音記号で上下逆さま、つまり鏡に映したように上下を入れ替えて演奏するのです。
 これをカノンの場合は更に、何小節かずらして演奏するのです。
 演奏は6、7種類聞きましたが、第2の声部が入るのはどの演奏も同じでしたが、曲の終わり型が色々あって面白かったですね。譜面に「解決譜」としてこう演奏するのですよって全体の楽譜が書かれていますが、明らかに間違ったものもあり、演奏家によって解釈が違うというのもあるのです。
 譜面によって一方の声部が楽譜の後ろから演奏したり……モーツァルトの作品に一つの譜面を上下から見て一緒に演奏するって曲もありましたね。まあ、そんな面白さが詰まっているのです。これは演奏を聴いても分かりません。譜面を買って楽しみましょう。

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